別れましょうか。
その時私はと言えば、梅雨入り間もないコンビニの新商品ラッシュに紛れて発売したばかりのプリンを口に運び、梨子は、高校の友人に借りたと言う、少し前に流行ったロールプレイングゲームの画面に釘付けになっていた。
緊迫感をかもし出すためなのか、それでもやはりどこか間抜けな電子音で構成されたゲームの音楽に紛れ、梨子の声はそれはそれはか細いもので、実際のところ私の聞き間違いと思えなくもないものだった。
「え?」
だから、私はスプーンの上でバランス悪く揺れるプリンに気を向けながら梨子にそう問い掛けた。
梨子の話によれば今彼女の操るキャラクターが対峙しているのはなんとかというラスボス(ラスボス、が何かは私には分からない)で、とにかくこれを倒せばこのゲームのストーリーは終焉を迎えるものだという。
数人のキャラクターに囲まれ、惨めなまでに袋叩きにされているそのラスボスとやらは、悪の権化と言うよりただの頼りないくたびれた老人にしか見えなかった。
「梨子?」
画面に夢中の梨子は、私の声に応えない。
手元に目をやると、あれほど気を遣って持っていたはずのプリンがテーブルの上に零れ落ちていた。
「勿体無いなあ」
視線だけをこちらに向けた梨子が、笑いを含んだ声で言った。
テーブルを拭くため、布巾を取りに立ち上がった私の背中に、あの台詞がもう一度届く。
別れましょうか。
ジャンル:小説・文学 テーマ:自作小説
2008⁄03⁄09 00:30 カテゴリー:ラヴホリック comment(0) trackback(0)
その時私はと言えば、梅雨入り間もないコンビニの新商品ラッシュに紛れて発売したばかりのプリンを口に運び、梨子は、高校の友人に借りたと言う、少し前に流行ったロールプレイングゲームの画面に釘付けになっていた。
緊迫感をかもし出すためなのか、それでもやはりどこか間抜けな電子音で構成されたゲームの音楽に紛れ、梨子の声はそれはそれはか細いもので、実際のところ私の聞き間違いと思えなくもないものだった。
「え?」
だから、私はスプーンの上でバランス悪く揺れるプリンに気を向けながら梨子にそう問い掛けた。
梨子の話によれば今彼女の操るキャラクターが対峙しているのはなんとかというラスボス(ラスボス、が何かは私には分からない)で、とにかくこれを倒せばこのゲームのストーリーは終焉を迎えるものだという。
数人のキャラクターに囲まれ、惨めなまでに袋叩きにされているそのラスボスとやらは、悪の権化と言うよりただの頼りないくたびれた老人にしか見えなかった。
「梨子?」
画面に夢中の梨子は、私の声に応えない。
手元に目をやると、あれほど気を遣って持っていたはずのプリンがテーブルの上に零れ落ちていた。
「勿体無いなあ」
視線だけをこちらに向けた梨子が、笑いを含んだ声で言った。
テーブルを拭くため、布巾を取りに立ち上がった私の背中に、あの台詞がもう一度届く。
別れましょうか。
ジャンル:小説・文学 テーマ:自作小説
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