だらだらと雑文。
ダンデライオン 【5】


だいたい、と三島さんは言う。
「だいたい、仕事が出来て気が利く男に彼女がいないなんて変よ」
あんなにたくさん湯豆腐を食べて、デザートにスフレ(しかもかなりボリュームのある)まで食べたのに、三島さんの手には道端で買った和菓子がある。
「その辺は放っといてあげて下さいよ、人それぞれなんだし」
林さんが三寧坂を歩きたいというので、ぼくらは清水寺を観てからだらだらと人の流れに従いながら坂を下っている。和泉さんは、前を行く林さんと二人、土産物屋を冷やかしながら最近観た映画の話に花を咲かせていた。
結果的に僕と二人で歩く羽目になった三島さんが、それほど残念そうでもないことに僕はほっとしている。
「個人の趣味じゃないですか、仕事に差し支えがあるわけじゃないし」
「でも、ある程度相手を知った方が、人間関係って円滑に進むじゃない」
確かにそれはそうだ。
けど、今三島さんと語るこの話題が、果たして『円滑な人間関係』にいい影響を与えるものなのか僕には判断しかねる。
前を見れば、林さんと和泉さんが、立ち止まって何かを試食している。
「房本くんはドライね」
三島さんがぽつりと呟いた。
振り返った林さんが、三島さんに向けて手招きをする。その隣で和泉さんは、どこまでもただにこにこと微笑んでいる。
ドライ。
三島さんの声が耳の入り口あたりで木霊する。
京都は何故か、どこもかしこも抹香臭い懐かしさがある。小さな頃、祖母の家に泊まった時のような心細さ。
全体的にくすんだような色彩の中、前を行く三人を眺めて立ち尽くしたまま、僕はどうしようもなく途方に暮れた。




ジャンル:小説・文学 テーマ:自作小説
2008⁄03⁄20 18:00 カテゴリー:ダンデライオン comment(0) trackback(0)
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